「少子高齢化」や「2025年問題」などの言葉を、しばしば耳にすることも多くなりました。それに伴って日本各地で医師不足も深刻化しています。
解決策の1つとして、多くの医学部では通常の「一般枠」などの他に「地域枠」という入試区分を設けて、地域医療を支えていく対策を行っています。
今回は、その概要をお伝えします。
『一般入試』とは違う『地域枠入試』
1、幾つかのメリットがある地域枠
保護者の皆さんの時代には、医学部を受験する際に「地域枠入試」という区分はありませんでした。「地域枠入試」が開始されたのは1997年度からで、最初は札幌医科大学と兵庫医科大学の2校でした。
「地域枠入試」とは、地域による医師不足や特定の診療科不足を解消するために、入試区分の1つとして設けたもので、大学卒業後に一定期間は大学や都道府県が指定する地域医療に携わることが義務付けられています。その代わり、志願者倍率が低かったり、奨学金として授業料が貸与されたり、あるいは毎月の生活費が支給される大学もあります。また、大学によっては一般入試よりも入り易いなど、受験する側にも何らかのメリットがあります。
2、杏林大学の地域枠の場合
例えば杏林大学の医学部「東京都地域枠(奨学金)入試」の場合、2017年度入学生で「東京都地域医療医師奨学金」制度(定員10名)の対象になれば、医学部在学6年間の授業料に毎月の生活費10万円が貸与され、その総額は約4,400万円になります。「貸与」ですが、次の要件(抜粋)を満たせば返還が免除されます。
『医師免許取得後、直ちに初期臨床研修を行い、引き続き小児医療、周産期医療、救急医療、へき地医療のいずれかの領域で、医師として、東京都が指定する医療機関に、奨学金貸与期間の1.5倍の期間従事すること。』
奨学金貸与期間の1.5倍は、通常だと9年間になります。この期間は、東京都に拘束されることになります。卒業後の臨床研修も希望する医療施設で行うこともできません。
杏林大学のこのケースの地域枠は、東京都内の高等学校等を卒業した者、あるいは平成 29 年 3 月卒業見込みの者となります。
3、選択肢のひとつとしての『地域枠入試』
一般入試や推薦・AO入試を含めて、何らかの形で「地域枠入試」を設定している大学は、2017年度入試ですと国公立大学で43大学、私立大学で27大学もあります。これは医学部全体の約86%の大学で実施していることになります。
注意することとしては、推薦入試同様にAO入試も「地域枠入試」も、試験科目が一般試験とは異なります。対策をしようにも、一般入試のように過去問が無い場合が多いです。
つまり対策が非常に難しく、また、合格しなかった場合も考えて、一般入試の勉強もやらなければなりません。
試験内容や卒業後のことまで含めると、一般入試とは大きく異なることもあり、最初から受験を考えない人も多くいますが、それでも倍率や学費などを考えると一度、「地域枠入試」についてお子様と話をされてはと思います。