新年度がはじまりました。今年も医学部人気は衰えることを知りません。
合格するために必要なボーダーラインにも大きな変化はなかったと思います。入試結果については、各大学から公表される志願者数などを基に、6月中旬より全国で開催する『医学部入試合格ガイダンス』で詳しくお話します。
さて、これから数回わたって主に保護者の方々に、医学部受験の現状についてお伝えします。昔とは違って、医学部進学は‘親子‘で乗り切るという心づもりが必要なので、保護者にも知って欲しいことが中心となります。
今の医学部人気と難化は当たりまえ?
私が予備校業界に関わるようになったのは1980年後半のことでした。当時、私は3大予備校の1つに勤務しており、東大や京大の合格者を多く輩出していました。この時代、成績上位者には東大・京大に続き医学部に人気がありました。
少子化が進む中、今では難関大学を除いては全入時代を迎えていますが、医学部志願者だけは衰えることをしりません。いくつかの原因を挙げると、
①医師不足②東大・京大など難関大志望者が医学部へ志望変更③女子の医学部志願者の増加④1970年代に設立の新設医学部(34大学)へ当初入学した保護者の子供が医学部を志望⑤歯学部不人気による医学部への志望変更
などが主な理由です。
ここ数年、揺るぎ無いと思っていた東芝やシャープなどの大企業の状況や弁護士増加による年収低下など、保護者が学生の頃には想像できなかったことが起こっています。
医学部人気は、ひとたび医師免許を取得すれば職に困ることもなく、定年もありませんし、女性も活躍の場も大きいので、女子の医学部進学者も増加しています。難関大学を出て大手企業に入社しても、倒産やリストラなど先行きが不透明なこの時代、医師免許は明らかに最強の資格となりました。また、生涯賃金も魅力の1つです。
また、純粋に「人の役に立ちたい」と考えている医学部志願者も増えてきたように思います。そのあたりは面接試験での評価基準となります。
このような状況の中、医学部の1年次入学定員も昔と比べると著しく増加しています。国公立大と私立大を合計すると、昭和30年度に2820名だった入学定員が、平成29年度には9420名と3倍以上も増えました。平成31年度までは医師不足解消を目的に、主に「地域枠」に限り、各大学の定員の上限を140名まで拡大できることになっています。しかし、志願者が増加しているために、医学部入試が易しくなる気配はありません。それどころか、国は平成32年度からは定員削減の検討を行っています。
医学部の難易度は国公立大学のみならず、私立大学も偏差値65(全統模試ボーダーライン)を超える状況となっています。特に私立大学の難化には著しいものがあり、1970年代には偏差値が50前後でしかなかった大学が軒並み偏差値65を超えています。私大最難関の早稲田大学や慶應義塾大学理工系学部の偏差値が65前後であることを考えると、私大医学部がいかに難しいかがわかります。保護者の中には、この状況にショックを受ける方も多いようです。
昨今、高校のレベルや人気を示す指標として、東大・京大の合格者数と同様に、医学部の合格者数も大きな力を持つようになりました。医学部がいかに世間での注目を集めているかがわかります。