医学部入試では、一般選抜/学校推薦型・総合型選抜を含めた全ての入試区分で面接試験が導入されています。面接試験で医師である面接官は、志望理由書などを見ながら、受験生に様々な質問を投げかけ、大学入学意欲や医師への適性を評価します。医学部の志望理由書の書き方やポイントをしっかり押さえ、出願書類の作成や面接試験の準備を行うポイントをお伝えします。
医学部入試に必要な志望理由書とは?
医学部入試に必要な志望理由書とは、医師になるための「将来の設計図」です。医学部に合格をすると、将来は「医師(もしくは研究者)」という職業に就くことがほぼ決まります。つまり、「医学部入試≒就職試験」と考えられます。また、試験の場では、各大学ごとで公表されているアドミッションポリシーと志望理由書を照らし合わせ、受験生の「医療現場に立つ『自覚』や『資質』を見ていることも意識することも大切です。
医学部の志望理由書を書く前にまとめる
3つのポイント
❶医者になりたい理由
医師志望理由は「きっかけ」に加え、「決意」を述べることがポイントです。
よく挙がる医師志望理由の例
・自分が幼少の頃、病気になり担当の小児科医に優しくされたため志望した
・父・母が医師で患者さんに信頼されている姿を見て医師を志した
・祖父(祖母、父、母)が病気で倒れた時に担当医が親身になっている姿を見て医師を目指した
「決意」を含めた志望理由書の例
・小学生の頃から医療ドラマや小説、生化学系の本や雑誌が大好きで、時間を忘れるくらいに熱中した。好きな科目である「生物」の授業を学んだことで、生涯を通してさらに専門的に学んでいきたい。興味があるのは遺伝分野で、分子遺伝学を研究したいと考えており、私は医師を志している。
・私がコロナウイルスに感染した時、不安の中で一人隔離された病室で過ごしていた際に、医療従事者が苦しんでいる人の治療している姿に感銘を受けた。その中でも、医師は最前線で医療現場を指揮していた。担当医と話す中で、私も医師になり苦しんでいる人の力になりたいと考えるようになった。
将来、どのような医師になりたいかは、とても大切です。現時点でよいので、臨床医か研究医どちらを目指しているのか。 臨床医ならば専門は何か、研究医ならば何を研究したいのか、地域医療なのか、世界を視野とした医療活動なのか、など、より具体的な方が、面接官には受験生の真剣な思いが伝わります。再生医療を研究したい場合、例えば 山中伸弥先生や、医療の行き届かない地域での活動を考えている場合は中村哲先生など、具体的な人名を挙げてもよいです。
❸受験する大学の志望動機
大学が公表している「アドミッションポリシー」「カリキュラムポリシー」「ディプロマポリシー」の3つは、必ず理解しておくことが重要。特に「アドミッションポリシー」は、「このような人に入学して欲しい」について書かれており、面接試験でもしばしば質問されます。そして、大学案内や各大学のWEBサイトに書かれていることは、隅々まで読んで理解しておくことが大切です。
医学部の志望理由書を作るときの構成
以下の通り具体的に構成を立てると、相手に伝えやすくするために文章の流れをイメージしやすくなります。
❶医者を志望する理由
先ほど述べた「きっかけ」と「決意」に分けて書くことが大切です。また、自分がなぜ医師に向いているのかを、高校時代の様々な活動を通して記入するとよいです。
できる限り、具体的に。「将来の医師像」は、「医師志望理由」と「大学志望理由」の2つに直結します。「将来の医師像」を達成するために、あなたの考えと受験大学の教育理念やアドミッションポリシー、カリキュラムなどが合致している必要があります。
❸大学で取り組みたいこと大学に入学したらどのようなことを学びたいか。まずは医学部の勉強やボランティア活動や研究活動、海外留学、地域活動への参加など、自身の学ぶ意欲や将来の医師像に近づくために、どのような行動を行うかを意識してまとめることが大切です。
❹大学の志望理
例えば「PBLチュートリアル」や「早期臨床実習・体験」、「クリニカルクラークシップ」などを「大学志望理由」に挙げる受験生がいます。これらは、ほとんどの大学で実施をしています。もしこれらを記入するのであれば、他の大学との違いや特徴も併せて記入する必要があります。大学の志望理由は、「この大学ではならない理由」を書く必要があります。
最後はこれまで述べてきた文章をまとめ、自分が主張したい部分を簡潔にまとめましょう。全体としてストーリー性や一貫性があることで、面接官へ想いを伝えることができます。志望校に入学し、6年間学ぶことで自分の理想の医師像の実現に近づく、といった内容へまとめていくとよいです。
医学部の志望理由書を書く時のポイント
○文章は簡潔に読みやすい構成で、文字は丁寧に大きく書く
○受験する大学のアドミッションポリシーを確認する
○地域枠の場合は地域医療へのビジョンを盛り込む
○自分の考えや思いを率直に書く
○誤字脱字に気をつける
■医学部の志望理由書の例文
大阪大学(例)
私は子供の頃から身体が弱かったために、人々を助ける医師に強い興味を持ち、その情熱が成長と共に深まってきました。そんな時に山中伸弥先生が、iPS細胞の研究でノーベル賞を受賞したことを知り、再生医療の可能性に心惹かれ、その分野において医療技術や知識を駆使して患者さんの命と健康を守るエキスパートになりたいと考えています。
貴学は、研究力や教育体制の充実が評価されています。国内外での交流や臨床実習の機会を通じて、幅広い視野と実践的な経験を得ることができると期待しています。
貴学で学ぶことで、再生医療の最新の知識や技術を習得し、新たな治療法の開発に貢献したいと考えています。常に患者さんの健康と生活の質の向上を追求する医師としての使命を胸に抱きながら、多くの人々の笑顔と希望を取り戻すために貢献したいと考えています。
順天堂大学(例)
将来は医療が行き届かない発展途上国で「外科医」として国際貢献をすることをめざしています。きっかけは、将来、国際貢献できる仕事を調べていた時に、誰もが一番大切にしている命や健康に携われる仕事として医師という職業が最も相応しいと考えました。医療と国際貢献について調べる中で、中村哲先生がアフガニスタンで献身的に地域住民と向き合った姿に感銘を受けたことで、医師をめざす決意が固まりました。
貴学の学是の1つである「仁」は、思いやりや人間性を重視する姿勢を表しており、私が目指す医師像と一致しています。私はこの学是のもとで、人々のために尽力できる医師として成長したいと強く願っています。貴学での学びを通じて、中村先生のように患者に寄り添い、国際貢献できる医師になりたいと考えています。
産業医科大学(例)
父が医師であり、幼少期から医療が身近にあったことが、私の医師としての道を志すきっかけでした。また、高校1年生のとき、いつも元気で笑顔に溢れる父が、仕事による過労でうつ病を発症し、笑顔を失ったことに強い衝撃を受けました。この経験から、働く人々の健康を守り、心身の負担を軽減する産業医の重要性を感じました。産業医科大学は、産業医の養成を目的として設置された我が国唯一の医学部です。貴学の教育を通じ、働く人々の健康と安全を守る産業医として社会貢献したいと考えています。
※実際に提出する志望理由書は、所定の書面や書式、文字数などに合わせて提出を行うことが重要です。