医学部を卒業して、医師国家試験に合格すると、自分が専門とする診療科を決めることになります。各診療科にはどのような特色があり、どんなタイプの人が向いているのでしょうか。
医学部入試の面接試験で、「将来は何科の医師になりたいですか?」と質問される大学もあります。
この連載では、診療科別に基礎知識として知っておきたいことをお伝えします。
今回は、『皮膚科医』編(その1)を取り上げます。
日本、世界ともに高まる皮膚科
日本皮膚科学会のホームページによると、近年、世界の医学生の間で皮膚科の人気が大幅にアップしています。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、台湾などでは、毎年、各診療科に所属できる医師の数が決まっているため、皮膚科の研修医はきわめて「狭き門」になっているようです。
日本でも例外ではありません。2014年に皮膚科を主たる診療科とする医師数は8,850名。10年前の2004年の7,780名と比較して13.8%も増加しています。
では、なぜ皮膚科の人気が高まっているのでしょうか。最大の要因は専門性が明確なことです。皮膚科では、皮膚に病変がある疾患すべてを扱います。しかも、対象となる疾患は幅広く、皮膚科を専門として研修を受けた医師にしかできない治療も少なくありません。そこにやりがいを感じる医学生が多いと考えられます。
また、ワークライフバランス(仕事と生活の両立)が図りやすいことも魅力です。救急外来の可能性が少なく、自分の生活スタイルに合わせた勤務時間体制を守ることができます。
そのため、女性医師の活躍も目立っています。2014年の皮膚科医の男女比は、病院では46.8:53.2と、女性の方が多くなっています(診療所は58.7:41.3)。これは厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」で、主たる診療科として掲げられている40診療科の中で唯一です。
そうした状況を受けて、日本皮膚科学会では、先輩女性医師をメンター(相談相手、指導者)として紹介する相談会や、地域ごとの女性医師ネットワーク形成の推進など、女性医師を支援する活動を積極的に展開しています。
さらに、皮膚科は開業しやすいことも大きな特色です。他の診療科と比較すると、医療機器などの設備投資が少ないからです。2014年の全診療科平均の開業率が34.3%なのに対して、皮膚科に限ると59.6%と、かなり高い割合になっています。
※この記事は「メディカルラボ通信 2016年.vol.1[診療科の基礎知識]」を編集したものです。
次回は『皮膚科医』編(その2)をお伝えします。