医学部を卒業して、医師国家試験に合格すると、自分が専門とする診療科を決めることになります。各診療科にはどのような特色があり、どんなタイプの人が向いているのでしょうか。
医学部入試の面接試験で、「将来は何科の医師になりたいですか?」と質問される大学もあります。
この連載では、診療科別に基礎知識として知っておきたいことをお伝えします。
今回は、『小児科医』編(その1)を取り上げます。
子どものための「総合医」
小児科はもともと内科の1分野で、年齢区分によって分類された診療科です。そのため、すべての臓器・部位の疾患、感染症などを対象とする、いわば子どものための「総合医」です。ただし、小児外科、小児循環器外科、小児整形外科、小児眼科、小児耳鼻咽喉科、小児泌尿器科など、特定の分野を専門的に扱う病院も少数ですが存在します。
小児科が主に治療するのは、新生児から中学生ぐらいまでの子どもです。そのほかに、先天性の病気が疑われる場合などには、産婦人科医と連携して、生まれる前から治療に当たることもあります。また、患者が成人してからも、小児科特有の慢性疾患については、継続して小児科医が担当するケースが少なくありません。
大学の医学部における小児科教育は、文部科学省の「医学教育ガイドライン」に、到達目標が示されています。小児科疾患の基本知識を修得した上で、症候・病態、診断、治療と予後をくわしく学んでいくわけですが、栄養法の知識や、乳幼児健診、予防接種などの保健政策への理解、さらには保護者からの聴き取り能力なども重視されているところに特色があります。
「モデル・コア・カリキュラム」に示された到達目標
[乳幼児]
①乳幼児の生理機能の発達を説明できる
②乳幼児の正常な精神運動発達を説明できる
③乳幼児の保育法・栄養法の基本を概説できる
④乳幼児突然死症候群<SIDS>を説明できる
[小児科全般]
①小児の精神運動発達および心身相関を説明できる
②小児の栄養上の問題点を列挙できる
③小児の免疫発達と感染症の関係を概説できる
④小児保健における予防接種の意義と内容を説明できる
⑤成長に関わる主な異常(小児心身症を含む)を列挙できる
⑥児童虐待を概説できる
⑦小児の診断法と治療法における特徴を概説できる
⑧小児行動異常(注意欠陥多動障害<ADHD>、自閉症、学習障害、チック障害)を列挙できる
[診療科臨床実習(小児科)]
①小児の診断・治療に必要な情報を保護者から聴き取ることができる
②正常新生児と主な小児疾患の全身診察ができ、診断と治療計画の立案・実施に参加できる
③乳幼児健診を見学し、小児の成長・発達と異常の評価に参加できる
④専門医へのコンサルテーションの必要性を説明できる
※この記事は「メディカルラボ通信 2014年.vol.4[診療科の基礎知識]」を編集したものです。
次回は『小児科医』編(その2)で「小児科の現状」を取り上げます。