医学部を卒業して、医師国家試験に合格すると、自分が専門とする診療科を決めることになります。各診療科にはどのような特色があり、どんなタイプの人が向いているのでしょうか。
医学部入試の面接試験で、「将来は何科の医師になりたいですか?」と質問される大学もあります。
この連載では、診療科別に基礎知識として知っておきたいことをお伝えします。
今回は、『小児科医』編(その3)を取り上げます。
小児科に向く人
どのようなタイプの人が小児科医に向いているのでしょうか。何よりも重要になるのは粘り強さだと思われます。注射を怖がって泣く子どもをなだめたり、病状が急変することもある中できめ細かな見守りを続けるなど、小児科に特有の苦労は多く、それらに粘り強く対応する力が求められます。そして、苦労はあるものの、子どもたちの健やかな成長・発達を直接的に支援できるところに小児科の醍醐味があるわけで、そこに喜び、やりがいを感じることができる人が小児科医に向いていると言えるでしょう。
もちろん、コミュニケーション能力も重要な要素になります。とくに小児科の場合は、子どもが自分の状態がどうなのか、分かりやすく説明できない場合の方が多いのが実状です。そのため、保護者から聴き取る力が大切になります。けれども、核家族化の進行で、母親一人で子育てするケースが増えており、子どもがなぜ泣いているのか分からず、パニック状態になっていることもあるでしょう。そんなときに、穏やかに粘り強く接して、保護者に安心感を与えるのも、小児科医の重要な役割なのです。
さらに、小児科医が扱う病気の中には、難病に指定されているものもあります。そのうち慢性的な病気で、治療に相当期間を要し、医療費の負担も高額になる疾患は「小児慢性特定疾患」として指定されており、医療費の公的負担が行われています。現在、悪性新生物(小児ガンなど)、慢性腎疾患、慢性呼吸器疾患、慢性心疾患、内分泌疾患、膠原病(川崎病など)、糖尿病、先天性代謝異常、血液・免疫疾患(血友病など)、神経・筋疾患、慢性消化器疾患の11疾患群514疾患が対象になっています。
そうした難病の中には、まだ原因が特定されておらず、治療法も確立されていない疾患も数多く残されています。小児科医にはそれに挑戦する気概も要求されます。
※この記事は「メディカルラボ通信 2014年.vol.4[診療科の基礎知識]」を編集したものです。
次回は『産婦人科医』編を取り上げます。