医学部を卒業して、医師国家試験に合格すると、自分が専門とする診療科を決めることになります。各診療科にはどのような特色があり、どんなタイプの人が向いているのでしょうか。この連載では、診療科別に基礎知識として知っておきたいことをガイダンスします。
医学部入試の面接試験で、「将来は何科の医師になりたいですか?」と質問される大学もあります。
『内科医』編(その1)では、「全医師の2割強が内科医で占められる」ことと、「内科が担当する領域は臓器別に多岐にわたる」ことをお伝えしました。
医療機器の進歩で治療方法にも変化
前述したように、内科医が行う治療は投薬が中心で、手術は行わないのが基本的なスタイルでした。現在でも、メスを用いて患部を切除するような手術は外科に委ねられています。けれども、近年は、医療機器が格段に進歩したことによって、新たな治療方法が導入されるようになっています。
その1つが、循環器内科部門における「冠動脈カテーテル治療」で、狭心症や心筋梗塞の治療方法の主流になっています。カテーテルとは医療用のチューブのことです。手首や肘、太ももの付け根などの血管(動脈)の中に、風船のついたカテーテルを、皮膚を通して心臓まで挿入し、先端から造影剤を流し込み、狭くなっている血管、詰まっている血管を広げて、元通りスムーズに血液が流れるようにすることができます。この治療方法だけでは、血管が再び狭くなる可能性があるため、それを防止するために、金属ステントという金属製の網状の筒を、血管内に置いて、血管を広げるようにする「冠動脈ステント留置術」と呼ばれる治療方法もあります。
また、消化器内科部門では、「内視鏡治療」が活発化しています。内視鏡とは、先端にレンズのついた管を臓器に挿入して、観察や治療をする医療機器です。かつては観察するだけでしたが、ファイバースコープが実用化されたことによって、現在では病変のある組織を切断する治療の機能が加わっています。そのため、きわめて早期の胃ガン、食道ガン、大腸ガンなどに用いられるようになっています。
具体的には、口や肛門から内視鏡を入れて、ガン組織を切除したり、焼き切ったりすることができます。最近では、鼻から挿入できる極細の内視鏡や、カプセル型の内視鏡も実用化されています。
身体にメスを入れる外科手術と比較して、患者の身体への負担が小さく、入院期間を短縮できるなどのメリットがあり、患者のQOLを維持、向上するためにも注目されています。
このように、内科医の治療方法も変化しています。これから医師をめざす人は「冠動脈カテーテル治療」や、「内視鏡治療」などに携わる可能性もあり、その場合は、手先の器用さや集中力も重要な資質になるでしょう。
※この記事は「メディカルラボ通信 2014年.vol.1[診療科の基礎知識]」を編集したものです。
次回は『内科医』編(その3)で「認定内科医」と「総合内科専門医」を取り上げます。