医学部を卒業して、医師国家試験に合格すると、自分が専門とする診療科を決めることになります。各診療科にはどのような特色があり、どんなタイプの人が向いているのでしょうか。
医学部入試の面接試験で、「将来は何科の医師になりたいですか?」と質問される大学もあります。
この連載では、診療科別に基礎知識として知っておきたいことをお伝えします。
第1回目「その1」では、『内科医』を取り上げます。
全医師の2割強が内科医で占められる
内科とはどのような診療科なのでしょうか。日本の代表的な内科学の専門書である『内科学』(杉本恒明他著・朝倉書店刊)によると、「内科学は疾病の本態と原因を明らかにし、疾病を発見し、対処して、患者の社会生活を可能な限りに健康的に維持するための臨床科学である」と定義されています。
人々が「頭が痛い」「体がだるい」「下痢がとまらない」といった身体の不調を感じたとき、多くの場合、最初に診療を受けるのが内科です。耳が痛ければ耳鼻咽喉科、不整脈を感じたら循環器科というように、不調な場所が明確な場合は、専門の診療科で受診すればいいわけですが、何となく調子が悪く、患者自身ではどの診療科の受診が最適なのか分からないケースも多いからです。当然、需要は高く、全医師の2割強(21.2%)が内科医で占められています。
内科医は患者との医療面接を通して、不調の原因がどの臓器(内臓)に由来しているのかを的確に判断し、必要な場合は他の診療科での受診を勧めます。また、内科では一般に投薬など、手術以外の方法で治療を進めますが、手術が必要と判断したら、外科と連携して治療に当たります。
その意味では、内科医には「患者と円滑なコミュニケーションを図る力」「患者の声を踏まえて、適切な判断が下せる幅広い知識と経験」「必要に応じて他の診療科に患者を紹介できるコーディネート力」などが求められるわけです。
内科が担当する領域は臓器別に多岐にわたる
一口に内科といっても、担当する領域は多岐にわたります。
そのため、医学部の内科学講座には、主として臓器別にさまざまな部門が設けられ、専門的に学べる体制がとられています。たとえば自治医科大学では9部門、昭和大学では12部門が設けられています<資料A>。
以下に、主だった内科の部門が担当する領域を紹介しましょう。
●血液学内科部門/白血病などの血液系●内分泌学内科部門/副腎などの内分泌器官●リウマチ学内科部門/膠原病。●循環器内科部門/心臓を中心に循環器全般●消化器内科部門/胃、大腸、小腸、肝臓、胆嚢、膵臓などの消化器全般●呼吸器内科部門/肺を中心に呼吸器全般●腎臓学内科部門/腎臓を中心とした泌尿器●神経内科学部門/脳、神経、筋肉など●心身医学部門/心的要因から生じる内科的疾患
<資料A> 大学の内科学講座の部門例
●自治医科大学
「血液学部門/内分泌代謝学部門/アレルギー膠原病学部門/循環器内科学部門/腎臓内科学部門/消化器内科学部門/呼吸器内科学部門/神経内科学部門/内科学講座診療連携部門」
●昭和大学
「呼吸器アレルギー内科学部門/リウマチ・膠原病内科学部門/糖尿病・代謝・内分泌内科学部門/消化器内科学部門/循環器内科学部門/腎臓内科学部門/血液内科学部門/神経内科学部門/腫瘍内科学部門/総合内科学部門/緩和医療科学部門/臨床感染症学部門」
※この記事は「メディカルラボ通信 2014年.vol.1[診療科の基礎知識]」を編集したものです。
次回、『内科医』編(その2)では「医療機器の進歩で治療方法にも変化」についてお伝えします。