医学部を卒業して、医師国家試験に合格すると、自分が専門とする診療科を決めることになります。各診療科にはどのような特色があり、どんなタイプの人が向いているのでしょうか。
医学部入試の面接試験で、「将来は何科の医師になりたいですか?」と質問される大学もあります。
この連載では、診療科別に基礎知識として知っておきたいことをお伝えします。
今回は、『救急科医』編(その3)を取り上げます。
救急科関連の教育・研究
日本の大学病院は、ほとんどが救急救命センターに指定されており、地域の救急医療の中核を担っています。けれども、診療においては最前線であっても、学生への教育に関しては、他の診療科の基礎を学び、専門性を深めることが優先されてきました。救急医療に触れるのは、5~6年次の臨床実習の一定期間だけで、救急科医の本格的な養成プログラムは、卒後臨床教育の中に設けるのが一般的でした。
そもそも救急医学系の教室・講座が設置されていない大学も見られました。けれども、救急医療の重要性が高まっていることから、近年、救急医学系の教室・講座を新設する大学が相次いでいます。
たとえば横浜市立大学医学部では2011年度、関西医科大学、和歌山県立医科大学では2012年度、産業医科大学は2013年度に創設しています。それに伴って、今後の救急科関連の教育・研究が、これまで以上に充実したものになっていくことは確実です。
また、臨床実習に入る前の4年次に、救急医療に特化した授業を開講する大学も出てきています。琉球大学医学部もそのひとつで、内因性疾患、外因性疾患の別なく、初期から3次までの救急医療ができる知識の修得をめざしています。その授業の到達目標は下に示した通りです。救急科医をめざす上で必要な基礎知識として参考にしてください。
[琉球大学医学部「救急医学講座」の到達目標]
以下について説明できることが目標
①救急医療体制/②救急患者診察のための基本的態度、バイタルサインの収集、初期診断、治療の優先順位(トリアージを含む)、および初期治療/③心肺停止患者の病態および心肺蘇生法/④外傷患者の緊急度、重傷度、治療の優先順位/⑤ショックの定義と分類、治療法/⑥全身性炎症反応症候群と多臓器不全の関連/⑦中毒起因物質による病態の違い、中毒治療の4原則/⑧重傷熱傷、環境による障害について病態および治療法/⑨循環器系救急患者の診断、治療/⑩急性呼吸不全の原因、病態、人工呼吸などの治療/⑪意識障害、頭部外傷の原因、病態、治療法/⑫救急医療におけるチーム医療の重要性、コメディカルへの配慮、および救急患者とその家族への精神的サポート/⑬専門家へのコンサルティング
迅速かつ柔軟な判断で命を救う救急医療のスペシャリストが救急科医です。
※この記事は「メディカルラボ通信 2014年.vol.3[診療科の基礎知識]」を編集したものです。
次回、『小児科医』についてお伝えします。