医学部を卒業して、医師国家試験に合格すると、自分が専門とする診療科を決めることになります。各診療科にはどのような特色があり、どんなタイプの人が向いているのでしょうか。
医学部入試の面接試験で、「将来は何科の医師になりたいですか?」と質問される大学もあります。
この連載では、診療科別に基礎知識として知っておきたいことをお伝えします。
今回は、『耳鼻咽喉科医』編(その1)を取り上げます。
「耳鼻咽喉・頭頸部外科」と呼ぶ大学病院も
耳鼻咽喉科は、一般的には耳、鼻、喉などの狭い領域を担当する診療科といったイメージを抱いている人が多いかもしれません。けれども、実際には、首から上の部分で、脳は脳外科、頸椎は整形外科、眼球は眼科、歯牙は歯科が扱いますが、それ以外はすべて耳鼻咽喉科が受け持っています。
しかも、対象とする領域によって治療法は異なります。そのため、ほとんどの大学病院の耳鼻咽喉科が専門外来を設けており、専門的に対応しています。たとえば愛知医科大学病院には、いびき、嚥下、めまい、アレルギー、補聴器、TRT(耳鳴り)、腫瘍、臭覚の8つの外来、富山大学附属病院には、めまい、いびき睡眠時無呼吸、アレルギー、聴覚、腫瘍、鼻涙管の6つの外来があります。
このうち、腫瘍とは頭頸部(耳、鼻・副鼻腔、口腔・咽頭、喉頭、頸部)に生じた悪性腫瘍のことです。高度な治療を提供する大学病院には、悪性腫瘍に対する集学的治療も求められています。そのため、近年は、「耳鼻咽喉・頭頸部外科」と名づける大学病院が多くなっています。
日本耳鼻咽喉科学会では、こうした「豊富なサブスペシャリティ」こそが、耳鼻咽喉科の最大の魅力としています。サブスペシャリティとは、専門分化した領域のことで、たとえば外科のサブスペシャリティには消化器外科、心臓外科などがあります。そして、耳鼻咽喉科関連では、日本耳鼻咽喉科学会のほかに、<資料1>に示したように、16もの専門学会が活動しています。このようにサブスペシャリティが豊富ということは、自分の興味、適性に応じて、各領域のエキスパートとして活躍する方向性も期待できます。
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<資料1>耳鼻咽喉科関連の学会
日本聴覚医学会/日本めまい平衡医学会/日本耳科学会/日本鼻科学会/日本気管食道科学会/日本頭頸部癌学会/日本音声言語医学会/日本顔面神経学会/日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会/日本小児耳鼻咽喉科学会/耳鼻咽喉科臨床学会/日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会/日本口腔・咽頭科学会/日本咽頭科学会/日本頭頸部外科学会/日本嚥下医学会
※厚生労働省「国民生活基礎調査」(2013年度)より
※この記事は「メディカルラボ通信 2015年.vol.3[診療科の基礎知識]」を編集したものです。
次回は『耳鼻咽喉科医』編(その2)で「QOLに直接影響する機能を担当する耳鼻咽喉科」を取り上げます。