医学部を卒業して、医師国家試験に合格すると、自分が専門とする診療科を決めることになります。各診療科にはどのような特色があり、どんなタイプの人が向いているのでしょうか。
医学部入試の面接試験で、「将来は何科の医師になりたいですか?」と質問される大学もあります。
この連載では、診療科別に基礎知識として知っておきたいことをお伝えします。
今回は、『産婦人科医』編(その3)を取り上げます。
生命倫理に関する深い学びも重要な産婦人科医
産婦人科医をめざすなら、大学時代に生命倫理に関して深く学んでおくことが重要になります。
というのも、産婦人科医の重要な役割の1つに不妊治療があるからです。子どもに恵まれない家庭にとって、人工受精技術の進歩はとても喜ばしいことでしょうが、非配偶者間人工受精や代理母などには、根強く反対する意見もあります。倫理面だけでなく、宗教や法的な問題が絡むことも少なくありません。
さらに、遺伝子解析技術の進展に伴って、新たな課題も生まれています。たとえば、受精卵の遺伝子を調べる「着床前診断」は、すでに実用化されています。日本の場合は、遺伝病や染色体異常などを調べることが目的ですが、外国では男女の産み分けに活用されているケースもあります。また、2013年10月、アメリカで「デザイナーベビー」につながる特許が認定されました。これは、精子や卵子の提供候補者ごとに遺伝情報を解析して、受精卵の段階で遺伝子を操作して、外見、知力、体力など、親が希望する特徴のベビーを作る技術です。実用化はまだ計画されていませんが、将来、「子どもをデザインする」ことの是非に関する選択を迫られる可能性もあります。
近年、多くの医学部で充実させている生命倫理学関連の授業をしっかり履修して、自分なりの倫理観を確立することが必要になるでしょう。
※この記事は「メディカルラボ通信 2015年.vol.1[診療科の基礎知識]」を編集したものです。
次回は『整形外科医』編(その1)で「整形外科医の社会的ニーズ」を取り上げます。