医学部を卒業して、医師国家試験に合格すると、自分が専門とする診療科を決めることになります。各診療科にはどのような特色があり、どんなタイプの人が向いているのでしょうか。
医学部入試の面接試験で、「将来は何科の医師になりたいですか?」と質問される大学もあります。
この連載では、診療科別に基礎知識として知っておきたいことをお伝えします。
今回は、『小児科医』編(その2)を取り上げます。
小児科の現状
近年、産婦人科医とともに、小児科医の不足が社会問題になっていることは周知のことでしょう。
実は、厚生労働省の「医療施設調査・病院報告」によると、全国で小児科を設置している病院は、2015年11月時点において2656施設で、前年度と比較して24施設少なくなっています。これで21年も連続して減少しているのです。小児科を設置する病院の減少が始まったのは1994年のことで、同年度に4000施設を割り込みました。2008年度に3000施設を下回り、2012年度は1994年度と比較して3割も減少しています。
小児科を閉鎖する病院が相次いでいる背景には、過酷な労働環境があります。小児科は夜間診療を伴うため、当直が多く、医師の負担が大きいのです。厚生労働省では「大学病院の小児科の勤務医は、勤務時間が法定勤務時間をはるかに超えている」と指摘しています。
そのほか、他の診療科と比べると医療訴訟のリスクが大きいことも、敬遠される遠因になっていると言われています。
また、小児科は他の診療科と比較して女性医師が活躍しています。厚生労働省では「小児科医の実際の活動性(ワークフォース)が明らかに低下する原因である女性医師の結婚、出産、育児のための離職について、女性医師が生涯、小児科臨床に従事できるような環境を整備することが急務」と、課題をあげています。
こうした状況を受けて、国の施策として、さまざまな対応策が進行しています。
厚生労働省では、2002年度から2004年度まで、「小児科産科若手医師の確保・育成に関する研究」を実施。「勤務条件の改善」(フレックスタイム、時間帯交代主治医制、グループ制、ワークシェアリングの導入、医師の当直・夜間勤務の翌日の休みの保障など)、「女性医師が仕事と家庭を両立できる就労環境の整備」、「医学生、卒後研修医師に対する小児医療・周産期医療への積極的動機づけへの支援」(奨学金制度、優先枠、地元枠の設定)など、多様な提言がなされています。
※この記事は「メディカルラボ通信 2014年.vol.4[診療科の基礎知識]」を編集したものです。
次回は『小児科医』編(その3)で「小児科に向く人」を取り上げます。