医学部を卒業して、医師国家試験に合格すると、自分が専門とする診療科を決めることになります。各診療科にはどのような特色があり、どんなタイプの人が向いているのでしょうか。
医学部入試の面接試験で、「将来は何科の医師になりたいですか?」と質問される大学もあります。
この連載では、診療科別に基礎知識として知っておきたいことをお伝えします。
今回は、『眼科医』編(その4)を取り上げます。
再生医療にもいち早く取り組む
順天堂大学医学部は、1952年にアメリカで開発されたコンタクトレンズを日本で最初に導入したり、1963年に日本初のアイバンクを設立したりなど、先駆的な活動で知られています。
現在の研究テーマは、角膜や網膜疾患の分子遺伝学的研究、免疫抑制剤の点眼への応用とアレルギー疾患の研究、スポーツ眼科など、多岐にわたっています。初代の佐藤勉教授が、近視眼や乱視眼に対する角膜前後面切開を行ったことが、現在の屈折矯正手術に大きな影響を与えたこともあって、エキシマレーザーによる屈折矯正手術にも積極的です。
このエキシマレーザーによる屈折矯正手術とは、角膜をエキシマレーザーで削り、角膜のカーブを変えることによって屈折異常を矯正する手術方法で、一般的に「レーシック」と呼ばれています。眼鏡やコンタクトレンズから開放される画期的な手術として脚光を浴びています。
けれども、術後の角膜変形・角膜混濁、ドライアイなど、合併症やリスクもあり得ます。集団感染症事件が起こり、社会問題になったこともあります。そのため、日本眼科学会では「屈折矯正手術のガイドライン」を示すとともに、必ず眼科の「専門医」の資格を取得した医師のもとで手術を受けるように促しています。眼科医としてレーシックに携わる際には、同学会で開催している講習会に参加するなど、常に最新の医療技術を習得しようとする姿勢が求められます。
眼科分野は研究面への期待も大きいということです。日本眼科学会によると、日本発の眼科関連の学術論文数は、アメリカに次いで第2位で、世界トップレベルの研究実績を誇っているのです。iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って再生した角膜の実用化も進行しており、再生医療の臨床応用が最も早く実現する可能性の高い診療科といえます。
今後の眼科医には、臨床はもちろん、研究面へも貢献しようとする姿勢が望まれます。
※この記事は「メディカルラボ通信 2015年.vol.4[診療科の基礎知識]」を編集したものです。
次回は『皮膚科医』編(その1)をお伝えします。