医学部を卒業して、医師国家試験に合格すると、自分が専門とする診療科を決めることになります。各診療科にはどのような特色があり、どんなタイプの人が向いているのでしょうか。
医学部入試の面接試験で、「将来は何科の医師になりたいですか?」と質問される大学もあります。
この連載では、診療科別に基礎知識として知っておきたいことをお伝えします。
今回は、『眼科医』編(その3)を取り上げます。
医学部で学ぶ「医学教育モデル・コア・カリキュラム」
医学部における眼科関連の学びはどのようになっているのでしょうか。
厚生労働省の「医学教育モデル・コア・カリキュラム」によると、目・視覚系疾患の構造と機能を理解し、症候、病態、診断と治療を説明できるようにすることが到達目標になっています。そのために、「眼球と付属器の構造と機能」「視覚情報の受容の仕組みと伝導路」「眼球運動の仕組み」「対光反射、輻輳反射、角膜反射の機能」を理解するとともに、基本的眼科検査(視力検査、視野検査、細隙灯顕微鏡検査、眼圧検査、眼底検査)を習得します。また、目・視覚系に関する主要症候(視力障害、視野異常、眼球運動障害、眼脂・眼の充血、飛蚊症、眼痛)の発症機序、原因疾患と治療を学ぶと同時に、下記に示した多様な疾患について説明できる能力を身につけます。
その後、大学病院などで臨床研修がスタートします。多くの大学病院が、あらゆる眼疾患の診断・治療・手術を一貫して行う「一般外来」と、より専門的な経過観察が必要な「専門外来」に分かれており、ジェネラリストとしての素養と、専門的能力の両方が養われるように配慮されています。
たとえば、東大病院の眼科には「網膜(網脈絡膜変性疾患、網膜色素変性症)」「糖尿病(レーザー治療、手術治療)」「黄斑(加齢黄斑変性)」「神経(突発性視神経炎、虚血性視神経炎、甲状腺ミオパチー、重症筋無力症、眼筋麻痺など)」「涙道(鼻涙管閉塞の内視鏡下治療-シリコンチューブ留置、鼻涙管吻合術)」「緑内障(薬物、手術治療)」「斜視(手術治療)」「腫瘍(眼腫瘍全般)」「ロービジョン(眼鏡などを使用した矯正視力が0.05以上、0.3未満対象)」「ぶどう膜」「角膜(角膜移植、ドライアイ、円錐角膜、角膜変性症、角膜感染症、水疱性角膜症、難治性眼表面疾患など)」の11の専門外来があります。羊膜移植、遺伝子学的診断、内視鏡下涙道ブジーなど、先進的な医療にも積極的に取り組んでいます。
- 「医学教育モデル・コア・カリキュラム」目・視覚系の疾患に関する到達目標
○屈折異常(近視、遠視、乱視)と調節障害の病態生理を説明できる。
○伝染性結膜疾患の症候、診断と治療を説明できる。
○白内障の病因、症候、診断と治療を説明できる。
○緑内障の病因を列挙し、それらの発症機序、症候と治療を説明できる。
○裂孔原性網膜剥離の症候、診断と治療を説明できる。
○糖尿病・高血圧・動脈硬化による眼底変化を説明できる。
○ぶどう膜炎の病因、症候、診断と治療を説明できる。
○うっ血乳頭の病因、症候と治療を説明できる。
○視神経炎・症の病因、症候と診断を説明できる。
○化学損傷(アルカリ、酸)の症候と応急処置を説明できる。
○色覚多様性(色覚異常)を概説できる。
○網膜静脈閉塞症と動脈閉塞症の症候、診断と治療を説明できる。
○網膜芽細胞腫の症候、診断と治療を説明できる。
○網膜中心動脈閉塞症の症候、診断と治療を説明できる。
※この記事は「メディカルラボ通信 2015年.vol.4[診療科の基礎知識]」を編集したものです。
次回は『眼科医』編(その4)をお伝えします。