医学部を卒業して、医師国家試験に合格すると、自分が専門とする診療科を決めることになります。各診療科にはどのような特色があり、どんなタイプの人が向いているのでしょうか。
医学部入試の面接試験で、「将来は何科の医師になりたいですか?」と質問される大学もあります。
この連載では、診療科別に基礎知識として知っておきたいことをお伝えします。
今回は、『眼科医』編(その2)を取り上げます。
開業率の高さと女性医師の活躍
眼科の大きな特徴の1つは、開業率が高いことです。厚生労働省「平成24年度医師・歯科医師・薬剤師調査」によると、全診療科平均の開業率は34.8%ですが、眼科に限ると63.9%と、きわめて高い割合になっています。
これは大学病院と個人診療所の棲み分けがしやすい診療科であることが関係していると考えられます。東大病院のように、「医学部附属病院眼科は、特殊な眼疾患や重い全身合併症のある方を主な診療対象としており、軽度の眼疾患の方の場合は適切な医療機関を紹介している」と明言している大学病院も少なくありません。分業化が図られている診療科といえるわけです。
開業医の場合は、主として軽度の眼疾患に対応することになりますが、その分、自ら見つけた病気を治療し、患者と生涯にわたって向き合うことができます。そして、患者のQOL(生活の質)向上に貢献しているという実感を得ることが可能です。そこに医師としての喜び、やりがいを感じることもできるでしょう。
また、眼科は女性医師の活躍も目立っています。病院勤務医では、美容外科に次いで第2位の40.5%、開業医では、皮膚科、血液内科に次いで第3位の35.8%が女性医師です。
その最大の要因は、ワークライフバランス(仕事と生活の両立)が実現しやすいことでしょう。眼科は救急患者が少ないため、他の診療科と比較すると夜勤や当直が少なく、出産・育児と両立させやすい面があります。手術も短時間で終わることが多く、体力に不安のある女性に向いています。
さらに、眼科はきめ細かな対応が要求されます。とくに小児眼科では、未熟児網膜症、網膜眼細胞腫など、小児特有の眼疾患を治療するとともに、人口の約2%に見られるという先天性の斜視、弱視にも対応します。これらの疾患は小児期に治療することが大切ですが、当然、小児に恐怖感を与えないように、やさしい態度で接することが求められます。その意味でも女性に適した診療科といえます。
※この記事は「メディカルラボ通信 2015年.vol.4[診療科の基礎知識]」を編集したものです。
次回は『眼科医』編(その3)をお伝えします。