医学部を卒業して、医師国家試験に合格すると、自分が専門とする診療科を決めることになります。各診療科にはどのような特色があり、どんなタイプの人が向いているのでしょうか。
医学部入試の面接試験で、「将来は何科の医師になりたいですか?」と質問される大学もあります。
この連載では、診療科別に基礎知識として知っておきたいことをお伝えします。
今回は、『眼科医』編(その1)を取り上げます。
高齢化や医療技術の進歩で社会的ニーズがアップ
眼科医は近視、遠視、老眼、白内障、緑内障など、すべての世代の眼の病気を対象とする専門家です。私たちにとって、きわめて身近な診療科の1つですが、近年、眼科医の不足が指摘されるようになっています。
日本眼科学会のホームページでは、「医師臨床研修制度が始まった後、全国の大学で眼科の入局者が減少し、地方の基幹病院から眼科の常勤医がいなくなる事態が全国各地で起こっています」と、警鐘を鳴らしています。
2004年度から、医師国家試験合格後に2年以上の臨床研修が義務づけられましたが、その必須診療科の中に眼科は含まれておらず、あえて眼科の臨床研修を選択する医師が減ってしまったことが、この背景として考えられます。
一方で、高齢化に伴って、白内障の手術は年間約100万件行われています。加齢黄斑変性、糖尿病網膜症など、高齢者に多く、失明の危険性もある疾患も急増しています。そのため、2030年には視覚障害者の数は年間200万人に達すると予測されています。
しかも、眼科医療技術の進歩で、かつてはあきらめるしかなかった病状でも、手術やレーザー治療などによって回復が見込めるケースが増えており、眼科医への期待は大幅に高まっているのです。
さらに、以前は眼鏡、コンタクトレンズだけであった屈折矯正も、レーシックが選択肢に加わっています。
このように、眼科への社会的ニーズは高まっており、眼科医をめざす人が増えることが期待されています。
※この記事は「メディカルラボ通信 2015年.vol.4[診療科の基礎知識]」を編集したものです。
次回は『眼科医』編(その2)をお伝えします。