2022年度に大学入試改革は、2年目を迎えました。
[その2]では、大学入試改革の導入2年目において、共通テストの「化学」「生物」が難化したことをお伝えしました。
今回は、共通テストの「数学」について考えてみます。
2年目の『大学入試改革』と共通テストの数学が難化したこと
センター試験の頃、医学部を目指す多くの受験生は、数学ⅠAとⅡBの目標点を100点にしていました。
2年目の「大学入試改革」で、共通テストは1年目以上に「思考力・判断力・表現力」を中心に問題を出題したことで、数学ⅠAとⅡBはとても難化しました。
共通テスト数学ⅠA:57.68点→37.96点 ( - 19.72)
共通テスト数学ⅡB:59.93点→43.06点 ( - 16.87)
数学ⅠAは、40点を下回り、センター試験が始まって以降、過去最低となりました。
センター試験は、出題内容がほぼ定型化しており、各大学が独自に実施する個別試験の対策ができていたら、80点以上を取ることができました。
ところが、共通テスト2年目は、数学で満点を取ることは非常に難しくなりました。
下記は、河合塾が共通テスト終了翌日に実施した「2022年度共通テストリサーチ(自己採点会)」の数学ⅠAの度数分布です。この分布を見ると、80点以上を取ることはかなり難しい状況です。
数学ⅡBも同様に、90点以上は取ることが難しいと思います。
2年目の「数学」は、何が変わったのか?
センター試験は、「基礎的な学習の達成の程度を判定」する試験でした。また、過去問が豊富に存在するために、演習を十分に行うことができました。
共通テストは、「知識の理解の質を問う問題や,思考力,判断力,表現力等を発揮して解くことが求められる問題を重視」するようになりました。
本来は、各大学が実施する個別試験で評価すべき学力を共通テストで評価するため、難しくなることは既定路線だった言って良いでしょう。
共通テストにおける問題作成の基本的な考え方について、大学入試センターは次のように発表しています。
英語や生物、地歴公民などは、このような考え方に沿って作成される問題を、なんとなく想像できると思いますが、数学の場合はどうでしょうか?
今年、ニュースなどで取り上げられて共通テスト数学ⅡBの第4問は、「数列・漸化式」の問題ですが、問題文を一見ただけでは、何の問題か分からない人もいたと思います。センター試験だと「数列」の式が羅列してあり、ところどころに空欄があり、全体をざっと見ると、過去問演習をやっていれば解法が目に浮かびます。
しかし、今回の数学ⅡBの第4問は、上記の①~③に沿って、次のような内容で作成された問題です。
①冒頭13行を使って、歩行者と自転車がどのような規則で動くかについての説明
②設問には、太郎さん、花子さんの会話文がありヒントになっている
③動きに関するxーyグラフが記載されている。
とにかく、冒頭の13行に渡る大量の問題文とその複雑な設定に、解答中に戦意喪失した受験生は多かったと思います。誰もが解いたことのない、見たことがない問題でした。
共通テストになって「思考力・判断力・表現力」が重視されることは理解していても、このような内容の問題演習をやった人は少なく、特にセンター試験の過去問を中心に演習を積んでいた人は、その傾向が強かったと思います。
全てがこのような傾向の問題ではありませんでしたが、新傾向の問題も多く、計算が複雑だったり、誘導が分かりにくかったりと受験生を悩ませました。
数学で苦戦をした結果、その次に実施された理科にも影響が出た受験生も多かったと思います。