医学部合格を目指す受験生にとって、英語・数学・理科などの学力を伸ばすことはもちろん重要です。しかし、それと同じくらい大切なのが、どの大学を、どの日程で、どのように受験するかという出願戦略です。
特に2027年度の私立医学部入試では、試験日程に大きな変化が見られます。この変化をどう捉え、受験校の選定に生かすかによって、受験の組み立て方も変わってきます。
11月に入ると、受験する大学を具体的に決めなければなりません。願書の入手・記入・提出、受験料の支払いに加え、遠方の大学を受験する場合には、交通機関や宿泊先の手配も必要です。こうした準備には、想像以上に時間がかかります。
受験校の選定を先延ばしにすると、出願準備に追われ、貴重な勉強時間を削られることにもなりかねません。
今の時期に取り組むべきことは、受験校を早めに絞り込み、入試本番までの学習に集中できる環境を整えることです。
では、2027年度の医学部入試で合格の可能性を広げるためには、どのような点に注意して受験校を選べばよいのでしょうか。
受験校を選定する際には、偏差値や大学の知名度だけで判断するのではなく、複数の条件を総合的に検討する必要があります。
このうち、特に意識してほしいのが⑦の「マッチング」です。
医学部入試では、大学によって入試科目の配点や問題の傾向、難易度などが異なります。必ずどこかの医学部に合格したいと考える受験生の場合、自分の得意科目を生かせる大学や入試問題との相性がよい大学を選ぶことも重要な出願戦略の一つです。
単にボーダーライン偏差値だけで判断するのではなく、自分の学力や特性を踏まえ、合格の可能性が高い大学を見極めることも大切です。
なお、受験校を選ぶ際には、チャレンジ校、本命校、安全校という分類を用いることもあります。しかし、医学部入試は競争が厳しく、一部の成績上位者を除けば、確実に合格できる「安全校」を見つけることは容易ではありません。
私立大学医学部専願の場合、これまでの私の指導経験では、7~8校程度を受験校として選定するケースが多かったです。一方、10校以上を受験すると、受験料の負担が増えるだけでなく、移動や試験の連続による体力的な負担も大きくなるため注意が必要です。
反対に、受験校を1~2校に絞りすぎると、合格の機会を狭めてしまう可能性があります。
大切なのは、受験校をむやみに増やすことでも、安易に減らすことでもありません。学力、経済的な条件、受験日程などを踏まえ、無理のない受験計画を立てることです。
私立医学部を複数校受験することには、合格の機会を増やすこと以外にも、いくつかのメリットがあります。これらは、国公立大学を第一志望とする受験生にも知っておいてほしいポイントです。
① 入試本番の雰囲気に慣れ、過度な緊張を防ぐ
大学入試では、学力が十分に身に付いていても、本番で緊張しすぎて実力を発揮できないことがあります。
特に現役生にとって、どこの大学にも合格できなければ浪人生活を送ることになるため、試験会場の雰囲気や独特の緊張感に戸惑う可能性があります。
1校だけを受験する場合、「この試験に失敗したら、後がない」という思いが強くなり、必要以上にプレッシャーを感じることもあるでしょう。
適度な緊張感は集中力を高めますが、過度な緊張は普段なら解ける問題でのミスにつながることもあります。
複数校を受験すれば、試験会場での過ごし方や時間配分、緊張したときの対処法などを実際の入試を通じて学ぶことができます。
可能であれば、第一志望校の受験日前に幾つかの大学を受験し、本番の雰囲気に慣れておくことも一つの方法です。
② 「実力を確かめる機会」として活用する
全国規模の模擬試験は、多くの場合、12月までに実施が終了します。しかし、受験生の学力は、年が明けてからも伸びる可能性があります。
特に現役生は、高校で理科や数学の教科書の学習を終える時期が12月上旬になることもあり、その後に知識の整理や問題演習を進め、総仕上げに志望大学の過去問演習をすることで、学力は大きく伸びる可能性が高いです。
ところが、1月以降は模試を受ける機会が限られるため、伸びた学力を実際の試験で確かめる機会が少なくなります。
そこで、私立大学の入試を、現在の実力や解答する際の時間配分、問題への対応力を確認する機会として活用する方法があります。
試験で解けなかった問題や、時間が足りなかった原因を分析し、速やかに復習することができます。
もちろん、大学ごとに出題傾向や難易度が異なるため、1回の入試結果だけで自分の学力を判断することはできません。それでも、実際の入試を通じて得られる経験は、その後の試験に向けた改善につながります。
入学する意思のない大学でも合格をすると嬉しいもので、以降の勉強に弾みがつき、逆に不合格の場合には、より一層気合を入れて頑張らなければと気が引き締まる受験をたくさん見てきました。
国公立大学を第一志望とし、私立大学を受験しない予定の受験生にも、ぜひ考えてほしいことがあります。それは、共通テスト終了後から国公立大学の個別試験までの過ごし方です。
国公立大学を受験する場合、一般的には次のような流れになります。
共通テストが終わると、受験生は自己採点を行い、河合塾などが提供する共通テストリサーチも参考にしながら出願先を検討します。出願が終わると、国公立大学の前期日程に向けた対策を進めることになります。
ここで注意したいのが、共通テスト終了後の気持ちの変化です。
共通テストまでは、時間の使い方や学習効率を意識し、緊張感を持って勉強していた受験生でも、試験が終わったことで気持ちが緩み、高校が自主学習となる場合が多いため、なかなか個別試験対策に切り替えられないことがあります。
国公立大学の前期日程までには、例年、40日以上の期間があります。この期間は、決して短くありません。
現役生にとっては、過去問演習や記述対策を通じて、得点力をさらに伸ばせる時期です。一方、高卒生にとっても、学力を維持し、最後まで完成度を高めるための重要な期間となります。
そこで、受験日程や体力、学習計画に無理がない範囲で、共通テスト終了後から2月10日前後までに私立大学を2~3校受験することをお勧めします。
入試日が決まっていれば、それに向けて学習計画を立てやすくなり、適度な緊張感を保つきっかけにもなります。
ただし、私立大学の受験そのものが目的になってはいけません。移動や試験による疲労、費用の負担、国公立大学の個別試験対策に使える時間などを考慮し、自分に合った計画を立てることが大切です。
私立大学医学部の中には、同じ大学の学科試験(1次試験)を複数の日程で受験できる大学があります。
2027年度について、以下の大学では、複数回の受験機会が設けられています。
例えば、帝京大学では、3日間すべてを受験することも、都合に合わせて受験日を選ぶこともできます。
同じ大学を複数回受験することには、次のようなメリットがあります。
・その大学の試験形式や会場の雰囲気に慣れる機会が増える。
・日によって問題が異なる場合、それぞれの試験で合格の機会を得られる。
・1回の試験で十分に実力を発揮できなかった場合にも、別の日程で再挑戦できる。
ただし、複数日受験が必ず合格につながるわけではありません。受験料や体力面の負担、他大学の入試との重複なども考慮する必要があります。
これらの大学への入学希望度が高い場合は、ぜひ複数日受験も含めて検討してみてください。
ここからは、2027年度の医学部入試において、特に注目してほしいポイントを説明します。
大学入試の個別学力検査の実施日については、2024年と2025年に文部科学省から大学に対し、「2月1日以降に実施」する旨の通知がありました。
1月中に一次試験を実施する私立大学医学部は、2025年度の14大学から2026年度には9大学へと減少し、2027年度には4大学となっています。
この変化に伴い、2027年度は2月1日から4日にかけて、複数の大学の一次試験が集中する日程となっています。
このように、複数の大学の試験日が重なる状況は、受験校を選定する上で見逃せないポイントです。
同じ日に複数の大学を受験することはできないため、受験生は、志望順位や入試難易度、得意科目との相性などを考慮して、受験する大学を選ぶことになります。
その結果、各大学の志願者数や競争状況に影響が生じる可能性があります。試験日が重なる大学は志願者が分散するために志願者が減少する可能性が高いです。
受験日程の重複を踏まえて受験校を慎重に選ぶことは、2027年度の出願戦略において重要です。
特に、合格の機会を広げることを重視する受験生は、2月1日から4日までの日程を確認し、自分に合った大学を選定しておくとよいでしょう。
では、実際にどの大学を受験すればよいのでしょうか。
まずは、先ほど説明した〈7つの受験校選定ポイント〉に立ち返ってみてください。
特に重要なのは、次の3点です。
受験校の選定では、偏差値だけでなく、入試科目、配点、過去問との相性、日程、経済的な条件などを総合的に考慮することが大切です。
なお、先述したマッチングという観点から受験校を考える際には、医学部受験専門予備校メディカルラボが紹介している受験校選定の考え方も参考にしてください。
参考:メディカルラボ「医学部受験のための指導・学習方法」
https://www.medical-labo.com/method/medical/