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2026年度 共通テストは難化する可能性が高い理由を考える

  大学入学共通テストが近づいてきました。国公立大学医学部を受験する場合、共通テストは避けて通ることができません。2026年度共通テストは難化するのではないかと言われていますが、今回はその根拠を探ってみましょう。 

 

2025年度入試を振り返る

 学習指導要領の改訂は、約10年ごとに実施されます。今年3月に高校を卒業した高校3年生が受験をした入試は、それまでとは異なる新しい学習指導要領に基づいた内容から出題されました。一般的に新課程入試と言われます。これ以外にも2021年度入試は、センター試験から共通テストへと変わるなど、ここ数年は受験生だけでなく高等学校や予備校などの教育現場にも少なからず混乱をもたらしました。

 2025年度の新課程入試で、それまでとは異なる大きな変更が生じたのは共通テストでした。
次の3つは、理系受験生にとっては負担増につながりました。

①これまで国公立大学医学部を受験する場合に必要となる科目は、5教科7科目(900点満点)でしたが、新たに「情報Ⅰ」科目が追加され6教科8科目(1000点満点)となりました。

②地歴公民の日本史、世界史は新科目「歴史総合」とセット、地理は新科目「地理総合」とセットで受験(理系は地歴公民から1科目選択)することになりました。

国語は近代以降の文章(実用的な文章)が1題追加され、大問4題から5題構成になりました。

 

 ところで、大学が独自に実施する個別試験(国公立大学前期試験や私立大学1次試験など)については、理系の場合には大きな新課程の影響を受けることなく、一部の大学を除いてほぼ例年通りの入試問題を出題した大学が多かったです。

 

2025年度の共通テストは、予想通り易しくなったのか?

 新課程などの新たな入試制度で実施された最初の年度の入試がどうだったかを、共通テスト、センター試験、共通一次まで遡って、平均得点率の推移から見てみましょう。

【グラフ1】センター試験・共通テスト 平均得点率(理系)

※河合塾より入手したデータを基に、メディカルラボで編集
19972020 : 河合塾センターリサーチ(5教科7科目) 2021 :河合塾 共通テストリサーチ(6教科8科目)
※平均得点率(理系)は、河合塾予想値
2015:数学、理科で新課程スタート、2016:全科目で新課程スタート、2021:共通テストスタート

 

 【グラフ1】は、河合塾が実施した共通テストリサーチ、センターリサーチ、共通一次リサーチ(自己採点会)の理系平均得点率(河合塾予想)です。赤い系列は、新課程や共通テスト、センター試験を含めた新しい入試制度で試験が実施された年度で、これを見ると、明らかに赤い系列の年度は、前年度よりも平均得点率がアップをしています。

 2025年度の平均得点率は63.3%で、前年度よりも1.4%アップしています。また、共通テストが開始された2021年度の平均得点率は63.4%で、2.1%アップしています。2025年度の場合には、わずか1.4%ですが、医学部合格者の多くを占める平均得点率80%以上の分布をみると前年比142となっており【グラフ2】、これが多くの医学部でボーダーラインがアップすることになりました。

【グラフ2】受験者数・平均得点率

※河合塾2025共通テストリサーチ資料より抜粋


 【グラフ2】で分かることは、平均点アップに影響を与えた受験者層は、平均得点率70%以上の成績上位者であったことが分かります。共通テストの問題は、センター試験の頃のように「知識・技能」で解答できるものが少なくなり、「思考力・判断力・表現力」を必要とする問題が増加したことが今回の結果につながりました。個別試験は、もともと「思考力・判断力・表現力」を試す出題が行われるため、この3つの学力が高い受験生は、共通テストでも高得点を取ることができたと考えてよいでしょう。

 

2026年度の共通テストは、難化する!

 そして【グラフ1】を見ると赤い系列の翌年、つまり新しい入試制度が導入された翌年は、これまで全ての年度(黄色の系列)で平均得点率は大幅に下がっています。新課程初年度は、対策の難しさや高卒生への配慮などからどの教科・科目も平易な出題が多く、しかしながら2年目からは全般的に難化する傾向があります。【グラフ3】

【グラフ3】センター試験・共通テスト 理系平均点得点率(2019~2026)


※河合塾より入手したデータを基に、メディカルラボで編集      ※平均得点率(理系)は、河合塾予想値

 これまでの経過を考えると、2026年度の共通テストは難化する可能性が高いと考えて良いと思います。医学部をめざす受験生の場合、科目別で考えると特に先に述べた「情報Ⅰ」と「国語」については注意が必要です。この2教科について、2025年度の問題はとても易しかったからです。

 

 共通テスト形式の問題が苦手な場合、その対策は、過去問だけでなく、様々な共通テスト問題集、全統模試を始めとする公開模擬試験を利用して、どんな出題がされても大丈夫なように十分な対策をしておきましょう。