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臓器別に基礎から臨床まで学ぶ 「統合カリキュラム」 医学部教育の今

2016/05/15

学問分野別の専門科目では教える内容が重複する可能性も

 かつての医学部の専門教育では、生理学、生化学、病理学、解剖学、内科学、外科学など、学問分野別に専門科目が配置されていました。今の医師の保護者が大学時代を過ごした頃も、ほとんどがこの形式だったと思います。

 学問分野別の専門教育のメリットは、各学問分野の知識・技術を体系的に深く習得できることです。
 しかし、この形式に対して、以下のような問題点が指摘されるようになってきました。多くの医学部では「講座制」と呼ばれる制度が採用されています。学問分野別に「講座」があり、それぞれに教授、准教授、講師、助教などが配属される、いわば縦割りのピラミッド構造になっています。そして、たとえば「生理学」の授業内容は、「生理学講座(または生理学教室)」の教授の裁量に委ねられ、他の授業を担当する講座との情報交換や調整が不足しているケースも見られました。そのため、複数の専門科目で同様の内容が講義されるなど、重複も少なくなかったのです。医学の進歩に伴って、習得しなければならない知識・技術が増大している中で、これでは非効率ですし、学生に過度の負担がかかってしまいます。
 また、臨床現場では、学問分野別の教科書で得た知識がそのまま通用することは、むしろ少ないのが現実です。医師として患者に接した際に求められるのは、学問体系にとらわれることなく、多角的な視点で患者の症状を見極める力です。
 そこで登場したのが「統合カリキュラム」です。学問分野別カリキュラムとは異なり、循環器、呼吸器、消化器など、臓器系統別のコースを設定。それぞれの臓器ごとに基礎から臨床まで学ぶカリキュラムです。たとえば呼吸器で肺を取り上げる場合、肺の構造とガス交換については「生理学」、肺の健康状態や疾患の程度の検査は「生化学」、どのようなタイプの疾患があるのか、それぞれの特徴を学ぶのは「病理学」、あるいは実際の治療に関しては「内科学」「外科学」といった具合に、多様な学問分野からアプローチしていくわけです。それによって、臓器系統別に知識・技術が「統合」されることが、「統合カリキュラム」の名前の由来です。

筑波大学が開学当時から採用 2000年代から導入校が相次ぐ

「統合カリキュラム」は、1950年代に、アメリカのケースウェスタンリザーブ大学で作成され、欧米の医学部カリキュラムの主流になっていきました。
 日本で最も早く取り入れたのは、筑波大学医学専門学群(現・医学群医学類)で、1973年の開学当初から採用しました。このため、当時は「筑波方式」と呼ばれることもありました。
 その後、しばらくは追随する大学はなかったのですが、1990年に東京女子医科大学が導入し、教育効果の高さが注目されるようになり、2000年代から導入校が急激に増えています。
 <資料1>に示した通り、一般社団法人全国医学部長病院長会議の「医学部教育カリキュラムの現状(2013年)」によると、「すべてにわたり採用している」14校、「多くの部分で採用している」38校、「部分的に採用している」27校にのぼっています。「採用していない」と回答したのは1校のみです。
 

兵庫医科大学、東京慈恵会医科大学、京都府立医科大学の具体例

「統合カリキュラム」の内容を具体的にイメージしやすいように、いくつかの大学の例を紹介しましょう。
 兵庫医科大学では、専門教育において「臓器別統合カリキュラム」を実施しています。<資料2>に3年次の専門科目を示しましたが(一部抜粋)、科目名自体が臓器別になっていることが分かります。ホームページには「講座の枠を超えて、臓器別に学生が勉強しやすい授業をめざしています。たとえば肝臓について解剖、生理作用、そして代謝、病気の成り立ちや病態、内科的治療や外科的治療まで、一貫して勉強します」と記載されています。
 東京慈恵会医科大学では、基礎系、臨床系の両方で「統合カリキュラム」を採用しています。「コース・ユニット制」という独自の制度に特徴があります。コースは、医学総論、総合教育、生命基礎科学、外国語、医療情報、社会医学など、大きな単位ごとに設定されます。各コースの下に設定される教育単位がユニットで、たとえば2年次後期の「基礎医科学Ⅱコース」は、臓器別に正常構造と機能を学ぶことを目的にしており、循環器系、呼吸器系、神経系、生殖器系などのユニットが配置されています。この「コース・ユニット制」のメリットは、教員の責任の所在が明確になるということです。まず、教学委員会が各コースの責任者を決定し、教授会の承認を得ます。次にコース責任者が、各ユニットの責任者を指名します。ユニット責任者は年間の教育計画を立案し、各回の授業の担当者を、自分が所属する講座以外から、場合によっては学外から招聘することも可能にしています。コースとユニットの責任者が、学生への教育効果に対して責任を持つとともに、講座の枠を超えた柔軟な教育が実現しやすくなっているわけです。
 京都府立医科大学は、先述した全国医学部長病院長会議の2013年の調査では、「統合カリキュラム」を唯一採用していない大学でした。けれども、2014年からは独自の「統合カリキュラム」を導入しています。これで、すべての医学部で、何らかの形で導入されたことになります。具体的には、専門教育において、従来の解剖学、生理学、内科学、外科学といった系統講義を残しつつ、総合講義制度が取り入れられ、特定のテーマについて横断的な講義が用意されています。たとえば「遺伝子診断・治療」という科目では、内科、小児科、免疫学教室など、基礎と臨床の教員が協力して総合的な内容の講義が実施されています。
 

PBLチュートリアルと合わせて導入することで教育効果を高める

ところで、「統合カリキュラム」は「PBLチュートリアル」と合わせて導入する大学が目立っています。
 「PBLチュートリアル」とは、学生が少人数のグループに分かれて、与えられた課題に対して、情報を収集・分析し、議論を重ねて、何らかの課題解決方法を見出して、発表するスタイルの教育方法です。近年、数多くの医学部で導入されています。
 かつての学問分野別カリキュラムでは、数多くの知識・技術を習得させるために、どうしても講義形式の授業が中心にならざるを得ないという問題点がありました。一方通行の講義で知識を注入されるだけでは、学生の主体的な学習を引き出すことは困難です。そこで、「統合カリキュラム」では、できるだけ講義形式の授業を少なくして、学生が自ら調べ、自ら考える機会を増やすために、「PBLチュートリアル」の導入が活発化したわけです。
 また、「統合カリキュラム」の問題点を軽減するためにも、「PBLチュートリアル」は有効です。学問分野別カリキュラムと比べた場合、臓器別に学んでいくと、一部の知識に漏れが生じる可能性があります。それを補うためには、学生の自主性を高めて、自ら知識を吸収する姿勢を養成することが不可欠になるのです。
 たとえば、岐阜大学医学部では、2年次1学期から4年次1学期まで(3年次1学期は除く)、臓器系統別の「統合カリキュラム」を採用していますが、そのすべての授業において「PBLチュートリアル」が全面導入されています。週3回、1時限目に行われるコアタイムで、学生に症例シナリオが提示されるところからスタートします。そのシナリオから学生が個々に疑問点を発見し、グループでディスカッションし、学習課題を整理します。その後、十分に確保されている自己学習時間を使って、自分で教科書を読み、最新の論文などを調べ、学習課題を深く考察します。次の回のコアタイムでは、各自がその成果を持ち寄って共有します。こうした一連の学習プロセスを繰り返していきます。
 以上見てきたように、近年の医学部は急速に「統合カリキュラム」へと移行しています。臓器別に、多様な学問分野の知見を結集する学びは、実践的な臨床能力を高める上でもきわめて有意義といえるでしょう。

 

<資料2>兵庫医科大学3年次の専門科目(一部抜粋)
「循環器系の疾患」「呼吸器系の疾患」「腎・尿路系の疾患」「消化器系の疾患(消化管の疾患)(肝・胆・膵の疾患)」「内分泌・代謝・栄養の疾患」「皮膚系の疾患」「成長と発達」「妊娠・分娩と乳房の疾患」「医の倫理とプロフェッショナリズム」「東洋医学入門」「血液・造血器の疾患」「免疫・アレルギー疾患」「運動器系の疾患」「視覚器の疾患」「耳鼻・咽喉・口腔・頸部の疾患」「頭蓋・顎・顔面および体表の疾患(形成外科学)」「歯・顎・口腔系の疾患」「精神の疾患」「検査学」「医学英語」など

参考データ

新しいウインドウでPDFを開きます資料1

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